Archive for 2011.9

影と秋の空

2011.9.25

 制作中、影の存在に驚いた。そのことを考えていると、子どもの頃にやった「影法師」という遊びを思い出した。地面に映った影をしばらくの間じぃっと見つめた後に空を見上げると、空に影が白く見えるという現象だ。空に映った影は、巨人のようで自分の影のようには見えなかったとともに、自分から生まれた影が空を浮かんでいることに「おぉ、人間って空が飛べるんだ」と感動した記憶があるような気がする。欄干に腰を掛けて足を遊ばせていると、そのような気持ちになるが、そのまま飛び降りても空が飛べるはずもなく、それならむしろ意識を上に向けた方が浮いている感覚になり、それが現実になるのだから、意識と現実感というのは上手く出来ていると思った。

水のようだ

2011.9.24

食が細くなったのかもしれない。友人から指摘されて気付いたのだが、思い当たる節はかなりある。食べることが面倒臭いと思うことが多く、好きなものや食べたいものもあるが大抵はつまむだけで充分になってしまう。基本は自炊だが、仕事のための体調維持やラクに栄養摂取するための食事を続け過ぎたり、懐かしい味を求め過ぎたのかもしれない。食に対して「究極的に美味だ」と、瞬間的な悦楽に浸ることがなくなってしまった。いや…食に関係なく、瞬間的な悦楽に浸ることは何年前から無いのだろうか。永遠性や普遍性、平等性を考えてきた副作用とでも言うのだろうか、世の中の多くのことが彩りながら、均質化していっている。

台風15号で休憩

2011.9.21

納品、納品、納品、入稿、額装(ニヤリ)、更新…日々は滞濁しらずの川のように勢いよく流れていたが、台風の影響でどこも「もうお終い」の様子。自宅も外の音には弱い造りなので、台風の日は室内の音がほとんど描き消されてしまい、集中力もあれよあれよと台風の方へ。こういう時は流石に諦めて、ゆっくりと過ごそう。

MP1の情報

2011.9.16

キャノン写真新世紀の作家情報にMP1のことを掲載していただきました。ちょっと無理を言ってこういう掲載にしていただいたので、感謝感謝です。(内部に詳しい方ならわかるはず)
 

キャノン写真新世紀作家情報はこちら
 
MP1のURLが間違っていました。正しくはこちら

乾燥機

2011.9.4

 変な天気が続いていたので、生まれて初めてコインランドリーの乾燥機を使った。以前、団地内に一時期設置された乾燥機を使用した際、あまりのコストパフォーマンスの低さに絶句して、乾燥機を信用していなかったのだが、洗濯物が臭う時があったので、しぶしぶ銭湯に併設されているコインランドリーの大型乾燥機を使ったのだった。
 
 水を吸った洗濯物は重く、近所にあるとは言っても、乾燥機の性能を信用していない僕には「かなり面倒臭いことをしている」と、怒りがふつふつと湧いているのを感じながら歩いていた。
 
 加えて、いざ到着すると銭湯の開き時間と重なっていたため、一番風呂待ちの客で入り口はごった返し、思いもよらない人の多さに怒りが上積みされるを感じ、仏頂面の早足で横を通る(お客さんからするといい迷惑だっただろうな…)。
 
 けれども、コインランドリーに入ると「あれ、乾燥機が大きいじゃん」と呆気にとられ、5台の中から使う台を吟味し(なんて言ったって性能を信用していないのだ)、いざ、洗濯物を投入し、お金をちゃりん、ちゃりんと200円(20分)投入。
 
 すると「ボッ!」と点火する音が聞こえ、ゴゴゴゴ…と地響きのような振動を発しながら洗濯物が勢い良く回転する。その宙を舞う姿に一瞬目を奪われたが、すぐに我に返り(なんと言おうが性能を信用していないのだ)、近所のコンビニへ立ち読みに出掛けたのだった。
 
 立ち読む雑誌もなくなってきた頃、ちょうど乾燥が終る時間になったので戻り、乾燥機の硬く閉ざされた扉を解錠し、静かに重なっている洗濯物に手を乗せたその時!! 僕の中に衝撃が走ったのだ!
 
 洗濯物が温かく、ふわふわしているではないか!? こ、これが乾燥!? これが乾燥機の真の性能!? あまりに信じられないので、乾いた洗濯物を移し替えるのを忘れて下の方に眠っている洗濯物にも触れてみたのだが、やはりふっくらと横たわっているではないか! な、なんという性能だ! そして、乾燥機の中で横になっている洗濯物をよく見てみると、宙を舞うのに疲れて眠っている子どものようではないか!? まさか、乾燥機とは衣服やリネンなどを生物に変えてしまう魔法の道具なのではないだろうか。古ぼけたコインランドリーの中に静かに佇む姿は魔法の扉のようにも見えるし、こんな道具がある限り、このような胡散臭さ全開の場所が潰れない理由もよくわかる。
 
 ふっくらとした洗濯物を移し替える時も、1枚1枚を確かめてはにやけてしまい、水分がすっかりなくなって生きているかのような洗濯物を抱えて家に帰って行ったのだった。
 
 そして、すっかり乾燥機の虜になってしまったのだった。(こういう天気が続かない限りは使わないだろうけれど)