ブランディングはパターン化できるのか?

2017.8.27 ビジネスの健康, 日々のこと

ブランディング(デザイン+コンサルティング)に関するセミナーやTipsの内容を読んでいると、成功事例をパターン化していたり、数字を用いて説明しているが、そのやり方が正解だと思わない方がいいです。「〇〇でこんなことを言っていた」「△△にはこんなことが書かれている」など、他の事例のやり方を鵜呑みにしてしまうのは危険です。なぜなら、全く同じ企業はなく競合がいたとしても、企業文化や企業内にいる社員はそれぞれ異なるからです。
 
そのため、事業や企業が異なればブランディングのやり方は異なります。
 
別の成功事例をそのまま使って課題を解決できるなんてことはありません。問題抽出の方法だって異なります。基本的なことの応用は必要だし、成功事例のエッセンスを参考にするのは良いことですが、相手が異なればベストプラクティスも、ベストアンサーも異なります。私自身も今まで携わった案件の成功体験を組み合わせて考えることはありますが、違う案件を全く同じやり方でやり通せた経験はありません。
 
先日、「ブランディングをする上で大事にしていることは何ですか?」と質問されて「リアリティ」と答えましたが、改めて思い返してもそれで正しいと思いました。顧客の事業によって事業規模もビジョンも異なり、ブランディング施策の先にいる人達の生活も変わってきます。事業者目線の話を、私たちが関わることで事業の先にいる人達にとってリアリティのある話にできるのか。ただただそれに尽きます。
 
そう考えてブランディング施策をしていくと、毎回、異なるストーリーが生まれます。それが醍醐味であるし、一番苦労するところです。
 
※現在、ビジネスの健康、心の健康、体の健康それぞれを各事業化するために一緒に働けるパートナーを募集しています。
 
 
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顧客として優先度を下げられないための方法。

2017.5.29 ビジネスの健康, 日々のこと

前回は顧客側に寄り添った内容だったので、今回はサービス提供者側の目線に立った内容になります。サービス(ビジネス)を提供していれば、いくつかの案件が同時に進むのは当然でてきます。そこで生まれるのが「優先順位」です。
 
B2B、B2C問わず、ビジネスの現場において「金払いがいいこと」と「『餅は餅屋*』をわかっていること」の二つによって顧客の優先順位は変わってきます。「得意先」や「お得意様」という言葉があるように、それはどの会社も同じでしょう。
 
恐ろしいのは、どの企業も優先度を下げるときは顧客に黙って下げているということです。そして、下げる要因を言わない担当者(企業)が多いことです。
 
これは当たり前のように思えるかもしれませんが、優先度を黙って下げていると、腹の探り合いが始まり、ビジネスのパフォーマンスを下げることになります。
 
私は顧客に対して「何が優先度を高めるのか」を言うようにしています。それが双方にとってプラスに働くからです。
 
そんな人は珍しいと言われます。それは裏を返せば、どの企業も顧客の優先度を下げるときは黙って下げているということです。そのため顧客側からの事後対応は(ほぼ)不可能であり、対応策としては優先度を下げられる前に予防するしかありません。
 
予防するためにはどうしたら良いのか? それは、自分達がお客として「金払いがいいこと」と「『餅は餅屋』をわかっていること」の二つを守れているかを省みるといいです。この二点を考慮してサービス提供者に働きかけていれば、提供されるサービスは良くなります。
 
*餅は餅屋:何事においても、それぞれの専門家にまかせるのが一番良いということのたとえ。また、上手とは言え素人では専門家にかなわないということのたとえ。
故事ことわざ辞典より引用。
 
 
顧客として優先度を下げられないための方法。

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ゼネラリストであろうとする理由。

2017.5.22 ビジネスの健康, 日々のこと

顧客に名刺を渡すと「カッコイイですね」と褒めてもらえます。私の名刺は文字情報しか載せていません。紙は良質なものを使っていますが、大量に出回っている紙なので安く印刷ができます。
 
この名刺は、最小限の要素で自分の仕事を最大限に伝えてくれるツールです。
 
以前、制作会社の方から「顧客から『デザイナーって何でも作りたがるけれど、印刷しても余って廃棄してるんですよ』と言われてしまって」という相談を受けたことがあります。他にも「SNSっていっぱいあるけれど、全部やった方がいいんですか」と顧客から相談を受けたこともあります。
 
どれも意味がありますが、作る必要のないものや施策を打たなくていいものはやらなくて構いません。
 
しかし、頻繁に見かける光景として、SNSプロモーションに特化した会社であればその施策を売り込んできますし、ロゴ制作に特化したデザイナーであればロゴで費用を使わせようとします。つまり、多種多様な顧客の悩みを自分の得意分野に無理矢理押し込もうとしているだけのことがあります。
 
それを避けるためにも、私はゼネラリストであろうとします。顧客の提供するプロダクトやサービスが、ユーザーをハッピーにするための方法に決まったやり方なんてありません。そのため、顧客が気づいていないユーザーをハッピーにするもの(必要なもの)があれば、それも伝えます。
 
必要のないものにはコストをかけずに、必要なところにコストをかける。それは予算を割いてくれた顧客への礼儀でもあります。
 
 
ゼネラリストであろうとする理由。

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「思考を停止させないこと」と「脳を消耗させること」は違う。

2017.4.11 ビジネスの健康, 心の健康, 日々のこと

自戒も込めて意識していることがあります。やりくりすることに脳を消耗させてはいけません。「思考を停止させないこと」と「やりくりで脳を消耗させること」は全く異なります。
 
アート、クリエイティブ、デザイン、ディレクション、マーケティングという類の言葉は一種の甘美さがあるので危険です。これらの職業についていると、目の前のことをやりくりすることに精一杯で脳を消耗しているだけにも関わらず、とてつもない価値を作っていると思ったり、重要な事業に携わっているような錯覚に陥りやすくなります。
 

一見すると似ている両者。

 
何人もそんな人を見てきました。彼ら(脳を消耗させているだけの人)の特徴は、承認欲求が強く、誰にも影響を及ぼさない所に極度のこだわりを持ち、そのこだわりによって周囲の時間や労力をすり減らします。
 
一方で、思考を停止させない人も自我が強く、主張がはっきりとしていますが、自らも動くことによって、人々にベネフィットとインパクトを与えることができると本気で信じて動いています。
 

彼らを識別するための質問。

 
両者は一見すると同じように見えるのが厄介です。そこで、違いを見分けるのに有効なのが、人々や社会や地球へのベネフィットを尋ねることです。健康になれる、手間を省ける、仕事量を減らせる、仕事を生み出せる、お金が稼げる、流行を知れる、生態系を壊さないなど、思考を停止させない人であれば自分以外の誰かや何かに対してのベネフィットを答えてくれます。
 
それが、企業やプロダクト、サービスの価値になります。こだわりが強い人と出会ったら、そのこだわりの先に自分以外の誰にベネフィットがあるのか、尋ねてみると良いです。

 
「思考を停止させないこと」と「脳を消耗させること」は違う。

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ヒューマンエラーは「ミス」ではない。

2017.1.19 ビジネスの健康, 心の健康, 日々のこと

ブランディングやクリエイティブという仕事をしていると、「何を作っているのですか?」という質問を最初に受けることが多い。そこで期待されている答えは「ロゴ」や「Web」や「ポスター」などのいわゆるハード(制作物)だ。こういうものを作っているのは事実だし、写真を撮影してレタッチ(写真加工)をして、Webコーディングもしているので人を介して紹介されるときは「写真を撮っている人」だったり、「Webを作っている人」という紹介をされるが、実はそれらはあまり重要ではない。ややこしいかもしれないが、私の仕事において最も重要なところは「コミュニケーションにまつわる意識を変えること」だといえる。
 
たとえば、メールでの日時の書き方を変えるのも仕事にあたる。
 
「20日にしましょう」という書き方に何も違和感を抱かなければ、そこに違和感を持ってもらい、「20日(金)にしましょう」と「日付+曜日」と書き直してもらう(実際には時刻や場所も同時に決めていく文面を書くが割愛する)。暦上、20日(金)が正しければ、20日(木)や19日(金)と書かれていた場合、メールを受け取った相手は間違いに気づくチャンスを得られる。これが日付のみを書いている場合、文面が間違っていても間違いに気づくチャンスが減り、コミュニケーションの行き違いが生じやすくなる。
 
ここで大事なのは、「書き間違えない(ミスをしない)」ことではなく、「人間はヒューマンエラーをする生き物」だということを意識して行動を変えてもらうことだ。
 

ミスを引き起こす、無駄な管理体制。

 
メールで日時を書き間違えるのはミスだ。しかし、人間であればヒューマンエラーは必ず起きるものであり、すなわちヒューマンエラー自体はミスではない。そして、ヒューマンエラーによるミスはなるべく避けたいのが人情だ。そのために紙への記入手続きを減らしたり、単純計算においてITを活用するように社会は発達してきた。
 
ヒューマンエラーを見越して行動できる仕組みが社内に浸透していれば、こういったミスを減らせるとともに、それでも生じたヒューマンエラーによるミスを許容できる。しかし、「人間はヒューマンエラーをする生き物」だということを意識できなければミスは減らないし、ITを活用できずに無駄な手続きを増やしたり、書類をむやみに増やしたりする。その積み重ねが会社全体の生産性を下げ、小さなミスを重ねることで相手の信頼感低下を引き起こす。一度失った信頼感は取り戻すことが難しく、ミスを受けた相手は常に疑ってかかるようになる。そして、経営陣は従業員を管理するための規則をやたらと作るようになり、生産性の高い人材が会社を去り、生産性の低い従業員が辟易としながら残るという悪循環に陥る。
 
飛躍した話かと思うかもしれないが、私が出会う企業で「小さなミス」が目立つ企業はこのパターンが多い。ミスが多いのは仕組みに問題があると気づかずに、ヒューマンエラー自体をしない人間を求めてしまっている(もちろん、そんな人材には出会えない)。
 

PDCAを有効に回せないパターン。

 
もうひとつ、メールにおいて「今週の金曜日」のように曜日だけを記載するのも、良い書き方とはいえない。「今週の金曜日」のように書くと、相手はスケジュールを確認する際に、カレンダーで「週」と「日付」と「曜日」を照らし合わせて確認しなければならない。意識するほどのことでもないが、「20日(金)」と送られるよりも、確認における手数が増える。この「意識するほどでもないこと」と「手数が増えること」がヒューマンエラーを引き起こす(実際は「20日(金)」なのに「27日(金)」と見間違えたり)。
 
つまり、ヒューマンエラーを引き起こしやすくなる行動を促しながら、仕事を通して製品やサービスを顧客に提供しているのだ。製品を使ったり、サービスを受けたりして、製品の使用方法に融通が効かなかったり、サービスが一方通行であったりして不快感を抱いたことはないだろうか? もしくは与えられた情報が多すぎて、何をどうしたらいいのかわからずに混乱したことはないだろうか? サービス提供者に手数を減らす意識がない場合、機能や情報の足し引きを検証し、改善することもできないため、このような製品やサービスの提供がされやすい。
 
これは近年話題になる「PDCAサイクル」を有効に回せないことにもつながる。相手の行動を予想することができなければ「計画(Plan)」を立てられず、場当たり的な「実行(Do)」となり、ひとりよがりな「検証(Check)」をして、足してばかりの「改善(Action)」をする(実際には計画を立てることは誰でもできるので、方向性を誤った計画になったり、途方もない計画になる)。
 

ヒューマンエラーを考慮したコミュニケーションデザイン。

  
今まで取り上げたことは私の職業名からは想像もつかないかもしれない。このブログでも度々取り上げているので、馴染みのある方もいるかもしれないが、「UXデザイン」というデザイン分野が台頭してきている。以前も書いたが「UX=User experience(ユーザー体験、顧客体験)」であり、UXデザインとは「製品やサービスとユーザー(顧客)が関わったときに、ユーザー満足度を向上させるためのデザイン手法」である。
 
既にお気付きの方もいるかもしれないが、私がクライアントの意識を変えるのは、ヒューマンエラーの意識を持つことで、製品やサービスと関わるユーザーのヒューマンエラーを考慮しやくすなり、実際に起きた場合でも対処しやすくなるからだ。人が不快感を抱く状況を予想できるのなら、ユーザーが不快感を抱かずにスムーズに製品やサービスを使える状況を作りだしやすくなる。さらに、リスクについて考える体制が整っていれば、どんなリスクが致命的なのかが判別しやすくなる。これはユーザーだけでなく、従業員に対しても同様である。生産性の高い有能な従業員が辞めないようにするには、無駄の多い管理体制や仕組みを変える必要がある。そのためのマインドチェンジをするのも私の仕事であり、むしろこれこそが私の仕事の根幹ともいえる。
 

経営者にとってもクリエイターにとってもWinWinであるために。

 
なぜ、ここまで私が見るのかと疑問に思うかもしれない。ここからは職業倫理になるが、私がクライアントと関わるとき「クライアントが自走できるようにする」という意識がある。
 
企業における予算とは短期・中期・長期的計画のどれにおいても、上司や役員、経営陣、投資家、株主を説得して初めて捻出される。個人事業主の場合でも自ら稼いだり、融資をされたり、借金をしたお金を予算としている。それを浪費とするか、必要経費とするかと問われたら、誰もが「必要経費」として有効活用したいはずだ。
 
ホームページが必要になってデザイン会社に依頼したら、ボッタクリを思わせる費用をデザイン会社から請求されたり、そのデザイン会社が得意なことをベストプラクティスとして提案されているだけなのに、クライアントはそのことに気づかなかったりする。そして色々と作ってみたはいいが、制作物を活用できない状況に陥る。これらは、ようやく捻出した費用を浪費したことになる。
 
その逆もある。クライアント側が、クラウドソーシングのような価格破壊の金額を当たり前として提示しつづければ価格競争になり、クリエイティブの質の低下は免れない。クリエイティブの質の低下は、製品やサービスを使うユーザー(顧客)への満足度を下げる要因につながる。昨年話題になったキュレーションサイトの問題も、価格破壊によって職業倫理が麻痺した結果、盗用が横行することになったのではと思えた。また、先ほど言ったように、クライアント企業内の意識が育っていなければ、有能な従業員が辞めやすくなる。
 
これまでの例は実際に私が出会ってきた会社たちだ。その度に、他の方法もあることや、そのための意識改革の必要性を説いてきた(そして、感謝をされた)。ポスターやWebを作るだけがデザイナーの仕事ではないし、生産性の意識が高ければ、ロゴやポスターを作ったとしても有効に使える。無駄な浪費ではなく、必要な経費として、クリエイティブの力を活用できるようになる。私がいなくてもクライアント企業内でクリエイティブが自走でき、手助けが必要になったときに再びタッグを組む。これが健全な仕事のあり方だと考えている。そして、そういう仕事でありたいために、ヒューマンエラーにおける意識改革をさせてもらっている。
 

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ブランディングの成否を分ける「目的」。

2016.12.22 ビジネスの健康, 日々のこと

2016年も終わりを迎えようとし、年末商戦や年始のスタートダッシュを図ろうとしている事業者やビジネスマンも多いだろう。日本では年の初めにその年の目標を立てることが一般的だが、事業の目的を振り返ることも忘れてはならない。そして、ブランディングをする上で「事業や企画の目的を明確にする」のは極めて重要だ。
 
私が東京・神奈川から離れて暖かい地域へ住みたいと思っているのも手伝って、今年は地域で活躍している方々と会うことが多かった。地域おこし協力隊やふるさと納税、移住への興味促進の効果もあり、どの地域も力を入れて商品開発をしたり、イベントを開催している。
 
地域のPRやイベントの盛り上がりも大事だが、忘れてはならないのが、当初の目的だ。物産展などで販売している商品を拝見させてもらうとき、「いいものを作っている」という説明を受けたり、物産展でどれだけ売れたかをアピールされる。もちろん、そういった自負は作り手には必要であり、各商品のパッケージやイベントのロゴマーク、宣伝ツールなどもお金や時間、手間暇をかけて作っているのがわかる。
 

まとまりに欠けるデザインがもたらすもの。

 
しかし、すべてに力が入り過ぎてしまい、まとまりを欠いている状態と出会うことが多いのが現状だ。同じ地域、同じプロジェクトのものを見ているはずなのに、違う地域・違う店舗・違うプロジェクトとして提供されても気づかない商品群やイベントツールとなっていて、種類の豊富さではなく、煩雑さが目立ってしまう。
 
こうなってしまうのも、事業や企画が進むうちに視野が狭くなり、当初の目的とずれてしまっているためだ。その商品を開発した目的は「地元の農作物を使っていいものを作りたい」というものだったのか、それとも、「都心での物産展で売ること」が目的で商品を開発したのかーーたったこれだけでも商品パッケージのサイズやデザインは異なる(商品価格によってもデザインは変わる)。
 

あなたはユーザーのベネフィットを言えるか?

 
さらに付け加えるのなら、「いいもの」という言葉はとても曖昧で、その言葉に含まれる意味は多岐にわたる。無肥料・無農薬・無添加というような素材に焦点を当てたり、栄養価が高いものだったり、美味しさだったり、地域の仕事づくりだったりと内容は様々だ。これらの目的は、それぞれが異なるベネフィット(利益)をユーザーにもたらす。
 
素材を優先するユーザーであれば、素材が良ければ価格は競合より高くても購入するが、地域への無償の応援は少なくなる。つまり、無肥料・無農薬・無添加で提供している地域は応援したくなるという順序だ。一方で、地域性を求めるユーザーであれば、地域の特産物や有名店である方が購買意欲が湧く。これは物産展でも同じであり、物産展で購入するのはイベントであること、地域らしさ、接客、味、というように優先すべきは地域性だ。「〇〇産」や「産地直送」といった謳い文句で購買意欲を煽るやり方が含まれる。
 
しかし、地域性を優先させた場合、その地域に縁もゆかりもないユーザーであれば、その地域から離れたり、物産展に訪れなければ購入しようとは思わないだろう(京都土産の八つ橋を日頃のおやつとして食べなかったり、宮崎の地鶏の炭火焼や冷汁を毎週食べないように)。つまり、リピーターになりにくいのだ。そこで今回の話の振り出しに戻るが、「その商品を開発した(イベントを開催した)目的は何だったのか?」という問いを思い出して欲しい。
 

当初の目的とユーザーベネフィットを結びつける。

 
物産展のブースを確保し続けることも大切だが、「いいものを作っている」という自負を持つのなら、地域性を担保しながら売ることができるデザインや売り方ができるはずだ。そして、ユーザーへのベネフィットを考えるようになるので、イベントではなく、常時販売できるテナントや小売店に卸すことだって可能になる。そして、逆も考えられるようになる。イベントを主催したり、店舗を経営したりする場合、来客しているユーザー層・来客して欲しいユーザー層・来客して欲しくないユーザー層を考えることで、その層に適したデザインや売り方を提供することができる。
 
それを可能にするのも、イベントや店舗に来客するユーザーや商品を購入するユーザーに、当初の目的を結びつけることから始まる。試しに自分たちが制作した商品やPRツールを並べてみるといい。どの商品、どのPRツールにも共通する性質をもたせているだろうか? 彩り豊かに種類を豊富に見せることと、統一感なく煩雑に見えることは違う。並べたものに共通する性質がなく、違う地域・違う店舗・違うプロジェクトの商品やPRツールが乱立しているように見えるのなら、巨視的(マクロ)な視点と微視的(ミクロ)な視点を使い分けることができていない証拠だ。そうならないためにも、今年を振り返るときや来年の目標を立てるときに、事業の目的を今一度振り返ってみてはいかがだろうか?
 
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私が『サーチ・インサイド・ユアセルフ』を勧める理由。

2016.12.13 おすすめ, 心の健康, 日々のこと

日本のビジネスマンの間でも話題になったマインドフルネス。書店に行けば、必ずと言っていいほどマインドフルネスを扱った本と出会えるようになり、日本人が著者のものも多くなっている。しかし、効果のエビデンス(証拠)となる論文やデータが記載されていないものもあり、その著者が何をベースに書いているのかが分からないものも多い。そんな中、冗長なユーモアや特徴的な翻訳に我慢できるのであれば、マインドフルネス関連本の中でも、『サーチ・インサイド・ユアセルフ 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法(以下、サーチ・インサイド・ユアセルフ)』は群を抜いてオススメできる。
 
「マインドフルネス」が初耳だという人もいるかもしれないが、著者であるチャディー・メン・タン氏の言葉を借りれば、マインドフルネスとは「ただあるがままでいるときの心(※1)」の状態である。そのため、日本でも話題になり、皆が想像している瞑想の姿は「マインドフルネス瞑想」と呼ばれる。
 
ではなぜ、数あるマインドフルネス関連本の中から『サーチ・インサイド・ユアセルフ』をオススメしたいのか? 理由は3つ(+α)ある。
 

『サーチ・インサイド・ユアセルフ』をオススメする理由。

 
理由のひとつ目は、Googleの成功が挙げられる。以前、『禅マインド ビギナーズ・マインド』のレビューでも話したが、現代人が瞑想やマインドフルネスに関心を持つ理由は「集中力を高め、ビジネスにおけるパフォーマンスを向上させたい」というものだろう。集中力を高めた先に「悟り」を知り、悟りの状態を「維持する」ことが本来的に望ましい状態だとしても、現代人にとってはビジネスパフォーマンスを向上させる方が強い動機づけになる。そういった意味で、誰もが恩恵を受けている検索エンジンを作っている会社が採用したプログラムというのは話が早い。しかも、プログラムは違えどIntel、Facebook、Linkedinなど、批判をする人がいたとしても成功を否定できない企業がマインドフルネスという概念をこぞって採用している(していた)というのも、後押しする事例だと考えられる。
 
オススメする二つ目の理由が、瞑想を科学の分野にしている点である。横浜での講演も記憶に新しいダライ・ラマ法王も、瞑想で得られる恩恵を科学的データにすることを奨励している。そういった背景も手伝ってか、エビデンス(証拠)になるデータや事例が数多く挙げられている。成功している企業だからと言って、すべてのプログラムが成功しているとは言えないが、瞑想における恩恵が事例データとして記載されることによって、プログラムの成功具合がうかがえる。そして、論文などの引用元が記載されているため、私たちがそのデータを調べることができることも大きい。日本の著書では事例を挙げていても、どこの論文なのか記載していないことが多く、引用元にたどり着けないことが往々にしてあったり、神秘的な感覚を重視しすぎていることが多い。
 
最後の理由が、プログラムを実施するやり方が詳細に記載されている点だ。どんなに優れた企業の役員や実績のある人の話でも、科学的データが揃っていたとしても、私たちが行えないのであれば、その話は単なる自慢話だ。日本のビジネスマンと話すと思想ではなく、経歴や事業実績だけが語られて「So what?(だからなに?)」という状態に陥ることは『サーチ・インサイド・ユアセルフ』という本の中では起きない。二つ目と三つ目の理由によってプログラムの再現性は格段に高まっている。つまり、著者であるチャディー氏が目の前にいなくても、私たち読み手はプログラムを実施することが可能になっている。
 

続けるための秘訣。

 
さらにオススメする理由をもうひとつ付け加えるとしたら、私の性格と彼の性格に共通している部分が見受けられる点だ。別の本になって恐縮だが、『RESET・リセットーGoogle流 最高の自分を引き出す5つの方法』の著者であるゴーピ・カライル氏が、インドの厳しい修行で学んだ瞑想が毎日続けられないことをチャディー氏に相談したところ「1秒でいいからやってみること」を勧められたと書いてある。この逸話を読んだとき、続けるための秘訣が「意識すること」にあるのを知っている人だと思えた。私とは違って生真面目な人に共通していることだが、「決められたことを全力で間違えずに行おうとする人々」がいる。残念ながら、そのやり方ではパフォーマンスを高めながら続けることは難しい。
 
それではなぜ、「決められたことを全力で間違えずに行うこと」を続けられないのだろうか?
 
まず第一に、「決められたこと」は内発的動機づけが起こりにくく、パフォーマンスは上がりにくい(プログラムというのはとても単純なものであっても、他人から決められたものである。※2)。第二に、人間は常に全力でいることはできない(全速力で1キロメートルも走れないように)。第三に、人間は間違う(ミスをする・エラーがある)生き物だ。だから、決められたことを全力で間違えずに行おうとすると続かないのだ。しかし、たった1秒で済むのなら、人は全力で行える。そして、他人が作ったプログラムでも、せっかく出した全力が1秒ではもったいないという気持ちが自然と湧き起こる。その結果、続けられるのだ(先の逸話でもチャディー氏から1秒と言われたのに、1分は瞑想を行うとゴーピ氏は誓っている)。
 

実際にマインドフルネス瞑想を続けた結果。

 
実際に、マインドフルネス瞑想を行なっていると、心身ともにストレスが極度にかかる状況でも、冷静さを保ちながら判断を下しやすくなっている。私の場合は、以前から瞑想をしていたり、今年に入ってからヨガも始めたので、一概にマインドフルネス瞑想のおかげとは言い切れないが、それでも冷静さにおいては以前よりも増し、利他的な傾向が強まっている(このブログも日本の知識労働生産性を向上させるためのお手伝いであり、誰かを変えたいと思ったり、自分の利益のためにやっているものではない)。
 
たとえば、冷静さの向上においては、先日昼食を作っている際に自らの過失で、左手の人差し指の爪を半分近く包丁で切り落としてしまった。痛みを感じた後、勢いよく血が流れ始めた。午後の予定に間に合うように急いでいたこともあって、切った直後は極めてストレスがかかったが、それでも自分がすべきことをスムーズに行うことができた。まずは片手で止血できる体勢を作ってから、スマートフォンで家の近所の外科を探して電話をかけた。しかし、昼時のために救急で診てくれる病院が見つからず、いくつもの病院や情報センターをたらい回しにさせられた(その中にはホームページで「救急対応」と書いている病院もあった)。大病院も頭をよぎったが、たらい回しにされている間に時間が経ち、救急車やタクシーを呼ぶよりも、近所の病院が開く時間を待った方が早いということに気がついた。そして時間になるまで指の痛みを感じつつ、午後から会う約束をしていた人に事情を説明するために電話をしたり、指を切ってからそのままの状態になっていた台所を簡単に片付ける余裕があった。
 
このように話すと大した傷ではなかったと思われるかもしれないが、病院から帰って来てからも血は止まらず、次の日に傷口を焼いて止血をしてもらったほどだ。
 
治療初日のガーゼが血で真っ赤になり、痛みと疲労で頭が冴えない状態でも、この事態をバネにして教訓を得ようと考えることはできた。怪我から3週間経った今も完治はしておらず、怪我のない頃よりも疲れやすくはなっているが、それでも気持ちに余裕があり、明晰に自分の行動を選択できている。左手の人差し指を使わないで行うキーボードのタイピングや家事など、仕事や生活の作業にも慣れている。
 
元々、私は物心つく前に腎臓病を患っており、そのお陰で精神的には鍛えられていた。何かアクシデントが生じても心理的な回復力は高い方だったが、マインドフルネス瞑想を意識的に行うことで、精神的な回復力は高まっているように考えられる(そのことが『サーチ・インサイド・ユアセルフ』内でも取り上げられている第五水準のリーダーに近づけていたら嬉しい限りだ。※3)。
 
「呼吸に意識を向けること」から始まるマインドフルネス瞑想。結跏趺坐(けっかふざ)、シャヴァーサナなどのポーズを強いるのではなく、怪我をしていても、手足が動かなくても行うことができる瞑想法。この心のトレーニングはやってみる価値がある。チャディー氏が「サーチ・インサイド・ユアセルフ」というプログラムを「『オープンソース』化し、グーグル以外の人にもアクセスできるようにする時が来た。この本は、その活動の一環だ(※4)」と書いているように、プログラムを理解し、実績や効果を知り、自ら実践するための手助けとしてはとてもお手頃価格であり、チャディー氏の思想が反映されている本ではないだろうか。
 
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※1:『サーチ・インサイド・ユアセルフ 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』、著:チャディー・メン・タン、出版:英治出版、2016年、p59
※2:『サーチ・インサイド・ユアセルフ』の中でも取り上げられているが、内発的動機づけと外発的動機づけについては、TEDトークのダニエル・ピンク氏の講演が簡潔にまとめられている。
※3:第五水準のリーダーについては、以下の本を参考にして欲しい。『サーチ・インサイド・ユアセルフ』でも一番の推薦図書になっている。
参考図書:『ビジョリナリーカンパニー2 飛躍の法則』、著:ジム・コリンズ、出版:日経BP社、2001年
※4:『サーチ・インサイド・ユアセルフ』、著:チャディー・メン・タン、出版:英治出版、2016年、p344
※5:本書の中で瞑想を科学的なトレーニングにしているのに加えて、出版に尽力した人々がいると思われる中、「監訳者による解説」が出版(再刊)に際して神秘性を強調する言葉で締めくくっているのは残念だ。また、監訳組織のプログラム費用が、「サーチ・インサイド・ユアセルフ」をオープンソースを謳うには難しいと思われる金額になっているのも、本書の思想とは遠いようにも思える。
※6:この本の続編にあたる『たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND』(著:チャディー・メン・タン、出版:NHK出版、2016年)が最近発売されて読みやすい文体になっているが、データの詳細さがなくなった点と、頻繁に出てくる「JOY」という言葉に慣れない点で、『サーチ・インサイド・ユアセルフ』を選ぶかどうかは読み手によって異なると思われる。どちらも良い本なので、書店で見つけたら手にとって欲しい。

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あなたのビジュアルコミュニケーションは正しく行われているか?

2016.12.1 ビジネスの健康, 日々のこと

前回に引き続き、今回も視覚における色の作用について話そうと思う。というのも、目・鼻・耳・口・皮膚の五感のうち、目、つまり視覚から受け取っている情報量が極めて多いことは誰しも一度は聞いたことがあるだろう。それは日常生活でもビジネスシーンでも強い影響力を持っている。
 
デザインやアートを仕事にして街を歩いたり、人と会っていたりすると、色々と驚かされることがある。いい驚きのときは発見になるが、一方で目を疑うような場面と遭遇することもある。奇遇にも今年は別々の場所で、同じ色の使い方について目を疑う場面があった。
 

色の組み合わせによる作用。

 
「黄色+黒色」という組み合わせがある。どちらが地でもいいし、図でもいい。文字にするとよくわからないかもしれないが、注意喚起を促すマークや、道路標識の警戒標識で使われる色の組み合わせだ。国土交通省によると警戒標識とは「道路上で警戒すべきことや危険を知らせ、注意深い運転を促すためのもの(※1)」であり、その標識を見た人に危険を知らせなくてはならない。つまり、視覚としてはコントラストがとても強く、眼にとって刺激が強い組み合わせになっている。そして、道路標識や工事現場などで「危険」を知らせるために使われることが多いため、私たちにとっても「黄色+黒色」という組み合わせは、使い方によっては「危険」という意味合いを感じやすいものになる。
 
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一方で、アパレルブランドの「FOREVER 21」や宅急便の「クロネコヤマト」に危険を感じないように、使い方によっては遠くでも視認できるインパクトを与えることができる。それを可能にしているのもこの色の組み合わせが、人間の眼にとって刺激の強いものであるからだ(他にも動物をモチーフにした宅配会社はあるのに、クロネコヤマトだけ怪談話のネタにされるのも不思議な話だ。言うまでもないが、クロネコヤマトのサービスはとても素晴らしく、宅配会社の中でも私は彼らを頻繁に選んでいる)。
 

ビジュアルコミュニケーションの成否。

 
そこで私自身が遭遇した事例を二つ挙げる。一つ目は、地域の公民館に訪れた際に見つけたポスターだが、「空き家」を募集した内容にも関わらず、「黄色+黒色」という組み合わせで作られてしまっている。しかも、アイキャッチとして「空き」の字が強調されていることも合わさって、とても刺激が強く、身構えてしまうデザインとなっている。私はこのポスターを一目見たとき、「空き巣」注意を呼びかけるポスターかと勘違いしたほどだ。勘違いの時間はほんの一瞬で、すぐに「空き家」募集だと気付いた。しかし、誤解させることを狙っているわけでもなさそうで、そもそも時間をかけてポスターを見る人がいないように、視覚におけるビジュアルコミュニケーションでは制作時の狙いと異なる結果になっているのではないだろうか。
 
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二つ目の例は、あるプロジェクトで相談に乗った際に参考サイトとして提示されたのだが、障害者アートの認知向上を促す海外のWebサイトであり、色弱者でも見やすいように作られている。ターゲットが合っていれば良きデザインだろう。しかし、色弱ではない私にとっては極めてコントラストが強く、30秒も閲覧できなかった。ただでさえ刺激が強い「黄色+黒色」の組み合わせを、光を発するモニターで全面に使っているために刺激はさらに強くなり、閲覧した後、数分間は眼の調子が悪くなった。もちろん、ターゲットが合っている場合は良きデザインとなり、ビジュアルコミュニケーションは円滑に進むだろう(「背景色変更機能」は欲しいが)。けれども、相談に乗ったプロジェクトでは障害者案件を扱っているものの、ターゲットは健常者だった。それではWebサイトの作りは良くても、誰にも使われないものとなる可能性が高まる(その後、相談されたプロジェクトからは離れたが、企画者にとってもユーザーにとっても良いプロジェクトになっていることをお祈りする)。
 

色の作用を間違えないことでデザインは強力なツールになる。

 
先述したどちらの例も、色の使い方によってビジュアルコミュニケーションの成否が左右される事例だが、色の作用を上手く活用できれば、デザインはあなたの事業にとって強力なツールとなる。それは事業の内容、ターゲットの特徴、色の性質の組み合わせとしてほとんど決まってしまうものである。どんなに素晴らしい思想があり、社会的に貢献できる事業だったとしても、色の作用を間違えて使っていればビジュアルコミュニケーションは破綻し、人々は離れていく。そうならないためにも、プロフェッショナルなデザイナーに相談することをおすすめする。それは個人事業でも、スタートアップ企業でも、100年続く老舗企業でも同じだ。あなたの事業には必ず、ふさわしいデザインがある。
 
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※1:引用サイト 「警戒標識の基礎知識」

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Adobe MAXから考えるクリエイターに依頼するタイミング。

2016.11.10 ビジネスの健康, 日々のこと

クリエイターには欠かすことのできないツールを発売しているAdobe(アドビ)社。都合が合わず行けなかったが、そのAdobeにおける新技術を披露するAdobe MAX 2016がアメリカ・サンディエゴで開催された(※1)。2Dから3D描画が簡単に作れるツールや、文字だけの手書きの下書きから適合する写真を自動で選んでくれるツール、人間の声を覚えさせて編集し、元はなかった部分さえもその人の声で再現できるツールなど、これまで専門職とされてきたスキルが民主化するのを助ける驚くべき技術が数多く発表されている。
 
なぜ、このようなことが可能なのか? ビッグデータの解析能力の向上、エンジンの向上、AIの向上など関わる要因は多いが、その大元は決まっている。人間の知覚や認知は理論が決まっているからだ(少数における誤差はもちろん発生するが)。
 
たとえば、デザインにおける色。シンボルマークを作ったり、Webサイトを作ったりする際に関わってくる色だ。少々古いデータになるが、「COLORlovers(※2)」が発表しているロゴマークで使われている色の多さでは、青系や赤系の色が突出して多いことがわかる。これは、青系には冷静さ・爽快さによる安定した事業のスピード感をイメージさせる効果があり、赤系には情熱やエネルギッシュさをイメージさせる効果があり、その狙いをロゴマークの色に反映させるためだ。実際に、赤色で囲まれた部屋では体感温度が2〜3℃上がるという実験結果もあるほどだ(※3)。
 
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もちろん、良い効果ばかりではない。赤は血の色をイメージしたり、青は寒々しさをイメージさせることもある。自然食品を扱う店舗のイメージカラーが青系だと、扱っているものが食品だと一般顧客にイメージさせるのは難しいが、行政から助成金をもらうのが目的、つまり、B2Bのビジネスとなっているのなら青系でも問題がないだろう(その場合、安心感を与えるために明るい水色より、落ち着いた印象の藍色の方が望ましい)。
 
こういった理由から、事業にあった色合いや使う量のバランスを調整していくわけだが、バランス量と認知の関係性も決まっている。それは色だけでなく、形やレイアウトにも同じことが言える。つまり、私たちが普段見ているものと見たものから感じる効果は決まっており、だから私たちはデザインやアートを作ることができるのだ。そして、決まっているからこそ、私たちが「スキル」として仕事にしてきたことをAIが学習し、スキルがなくても簡単に「いい感じ」のものが作れるようになっているわけだ。
 

これからのプロフェッショナルに必要な能力。

 
しかし、先述したように「学習」し、「決められた」ものを作り出すことがAIにできることである。これは聞いた話になってしまうが、まだ機械やAIができないこととして「人間の手(指)の力加減」と「関係ないもの同士を結びつける能力」の2点が挙げられる。前者においては、蚕の繭(まゆ)から絹糸を垂直に引っ張ることは機械でも可能だが、そのまま糸を引き上げようとすると途中で糸が切れてしまうらしい。途中で糸を切らずに引っ張る指の力加減による繊細な動きはまだできていないようだ。後者においては、先日のブログ(※4)でも他者視点を持つ方法として話した、「関係ない話題」を「結びつける」ということができないのだ。
 
これは、電子レンジの発明で有名な話がある。軍事用レーダーの研究をしていたスペンサー博士が、レーダーの近くで働いていた人のポケットに入っていたチョコレートが柔らかく溶けていたことをヒントに、「レーダーによる電磁波」と「チョコレート(食べ物)」という関係ないもの同士を結びつけて「電子レンジ」を発明している(※5)。
 
こういった、関係ないもの同士を結びつけることも、将来的にはAIが可能にするだろう。しかし、それよりも先に、専門職とされるスキルがAIによって民主化し、単一技能における専門職は安価になるか、不要な職業となる。現在、AIによる精度の低さを指摘されていたとしても、必ず精度は向上する。そうしたとき、人間の仕事において必要になるのは、関係ないもの同士を結びつける能力や、多様な顧客体験(ユーザーエクスペリエンス:UX)を予測・選択して形にする能力だ。これらの能力を既存の専門職のスキルと結びつけていなければ、その職業は不要となる可能性が高まる。
 

これからのクリエイターに依頼するベストなタイミング。

 
専門職に依頼をするクライアントにおいても、現時点ではAIの精度が専門職のレベルに達していないことを理解する必要がある。そうでなければ、精度の低いものを自作したり、スキルの低いデザイナーに安価で依頼することになる。その先の顧客体験はひどいものとなり、顧客(ユーザー)が離れていくことは言うまでもない。問題提起の段階では素人はとても効果的であるが、問題解決の段階では専門家のスキルが効果的になる。これは、素人の問題提起が「関係ないもの」を生み出し、誰もがハッとする考えに結びつきやすいためであるが、専門的なスキルがなければ解決させることができないからだ。電子レンジを発明したスペンサー博士もエンジニアとしてのスキルがなければ発明(解決)ということは成し得なかった。
 
そのため、デザインやブランディングにおいて私たちが関わる理想的なタイミングとしては、かなり早い段階が望ましい。たとえば、Webサイトの場合、「Webサイトが必要なのだけれど、どうしたらいいかわからない」という段階でコンタクトをとってもらった方が良い。クライアント(依頼者)の事業のことは私たちは素人なので問題提起がしやすく、問題解決に必要なスキルを持っているので効果的な制作ができる。もしくは、クライアントにとって本当に必要なのはWebサイトではなくて、ブランドイメージを伝えるポスターやイベントツールだったということも実際にある。これも早い段階で関わらせていただいたことで可能にした問題提起と問題解決である。
 
逆に、ほとんどのことをクライアントの方で決めてしまって「後はカッコよくデザインするだけ(実際はレイアウトのみ)」という状態から関わることが、一番ややこしい状態だ。渡される制作内容が顧客(ユーザー)にとって望ましいものではない場合がほとんどであり、さらには、先ほど挙げた実例のように、そもそもクライアントにとって必要なものが異なっている場合もある。
 
高い能力を持った専門職は費用も高く、あまり言われたくもないような厳しい指摘も受けるかもしれない。しかし、そのために培っている知識・技術・応用力は費用に相応するものだと言えるだろう。安物買いの銭失いという言葉があるように、安いものには「品質が悪い」という理由がある。作ったものの先には、それを受け取る顧客(ユーザー)がいることを忘れないで欲しい。作ったものは自分だけで止まるものではなく、サービスや商品を渡したい相手(ユーザー)に届き、その人が抱いた印象ですべてが決まる。もう一度言おう、高い能力を持ったクリエイターは費用も高く、クライアントであるあなたへの指摘も多いかもしれない。だからこそ得られるものがあるのだ。それは、私がクライアント(依頼者)になっても同じ考えを持って接してもらっている。
 
※:EGUCHIMASARU.comのサービスはこちら。 
 
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※1:今年のAdobe MAXのレビューはこちらの2サイトがオススメ。「ITmedia Adobeの新技術11連発まとめ 音声データをPhotoshopみたいに編集――“魔法の技術”にクリエイター歓喜」「engadget Adobe MAX 2016:人間の声を「フォトショする」驚きの機能をAdobeがMAXでデモ(笠原一輝)」
※2:参考サイト 「COLORlovers」
※3:参考サイト 「カラーセラピーランド 色彩心理学(色の効果と心身への影響)」
※4:他者視点によるUXデザイン
※5:ポケットに入っていたのはチョコレートではなくて、キャンディーだったという説もあるが、今回の話題においてその議論は割愛する。

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ビジネスの健康+心の健康+体の健康で不安を和らげるお手伝いをする。

2016.11.1 ビジネスの健康, 体の健康, 心の健康, 日々のこと

日本語の「過労死」は「KAROSHI」という英語になりました。私自身も過労死のことを考えることは多くなっています。100時間を超える時間外労働や心無い言葉。それは私も経験しました。人物の性格の良し悪しと知識労働生産性は必ずしもイコールではありません。知識労働生産性の向上は、向上させるためのスキルがあり、人格の問題ではありません(知識労働生産性を向上させた副産物として、人格が改善されることはあります。なぜなら、そちらの方が周囲のパフォーマンスを向上させることに気がつくからです)。つまり、知識労働生産性を上げることは誰でもできることであり、どんな会社でもできることです。
 
通常業務に加えて、社内の仕組みを変える提案もしていた勤務生活。「仕組みを変える提案」の場合は、ほとんどボランティアで動いていました。体を壊したことで「このまま会社に残っていては自分の人生の目標が果たせない」と気づき、仕組みの変わらない会社を辞めました。
 
知識労働生産性を高めるビジネスの健康、頭の中が晴れる心の健康、運動や自然栽培による体の健康。瞑想、ヨガ、自然栽培、グルテンフリーなどを勉強していて分かったことがあります。秘訣は悟り。自然であることです。不自然なものは不健康になり、不安を募らせます。
 
ビジネスにおける不安は「顧客を満足させられるのか? 」「上司や役員を説得できるのか?」「納期までに終わるのか?」など。心における不安は「自分の言動はおかしくないか?」「眠れるのか?」「苦しみがとれるのか?」など。体における不安は「太りたくない」「病気になりたくない」「老けたくない」など。ビジネスにおいても、心においても、体においても、不自然で不健康であれば不安は募る一方です。この仕組みは完全に決まっていて、だからこそ自由になれます。デザインもビジネスもやり方や理論が決まっていて、そのために、多種多様な企業が成功できているのです。生まれてすぐに腎臓病になった私が過労をしても鬱病にならなかった理由は、仕組みを知っているという悟りにあります。
 
私がデザインを仕事にする理由は、より多くの人に、知識労働生産性を高めてもらって、仕事のパフォーマンスを効率良く上げてもらうためです。私がアートを仕事にする理由は、より多くの人に、「こんな方法もあったか」と、いくつもの道があることをひらめいてもらうためです。私が自然栽培やグルテンフリーを薦める理由は、より多くの人に、体に良いものを摂ってもらうためです。ビジネスが円滑に進むとき、頭は冴えています。頭が冴えているとき、体は良く動きます。これはとても自然なことです。これらを広めるために、今の私はあります。
 
私がデザインを仕事にする理由:より多くの人に、知識労働生産性を高めてもらうため。
私がアートを仕事にする理由:より多くの人に、ひらめいてもらうため。
私が自然栽培・グルテンフリーを薦める理由:より多くの人に、体に良いものを摂ってもらうため。

 
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