値下げを期待すると失敗する理由。

2020.1.6ビジネスの健康, 初心者のためのデザイン心理

「デザインに力を入れたい」と言うクライアントは多いが、大抵は失敗する。
それは、クライアントのお金の掛け方が間違っているからだ。
現代人は機能にお金を払い、コストパフォーマンスをとても気にしては、金額が安い方を選ぶ。
このようなお金の使い方では、お金をかけて作ることに意味を見出すのは難しい。
 
「なるべく安く手に入れよう」という思惑がある人に対しては、「なるべく高く売ろう」という人がやってくる。
なぜなら、安く手に入れようと考えている人の周りには、価値を提供できる人は集まらないか、いたとしても離れていくからだ。
そうすると、必然的に、高く売ろうという人が残るか、集まるという仕組みだ。
 
価値を提供する人というのは、自然と価格が高くならざるを得ない。
価値を提供する人は、「人の性質」や「歴史」を学び、「技術」を研鑽してきた人だ。
これらを駆使して、価値を提供する専門家となる。
何にお金を払うかは人の自由だが、これらに対してお金を払えない人は、提供される価値も理解できないのだから、専門家ともやりとりができない。
繰り返しになるが、だから、安く手に入れようとする人の周りには、価値を提供する人ではなく、高く売ろうとする人だけが集まるのだ。
 
それでは、今まで安く手に入れようとしていた人が変わるには、どうしたらよいのか。
それは、人間を知ることが重要だ。
 
知覚情報には、存在の情報と価値の情報があり、人々が欲しいと思うものには、この二つの情報が備わっている。
たとえばオムライスを提供している飲食店の看板の場合、「オムライスの情報=存在の情報」となり、「他のお店のオムライスではなく、うちのお店のオムライスは食べる価値があると思われる情報=価値の情報」となる。
 
構図も悪く色あせたピンボケ写真を載せているのは、存在の情報しか伝えていないことになる。
一方で、構図やボケみ、色味などが適したシズル感のある写真は、存在の情報に加えて、おいしそうと思われる価値の情報を伝えている。
価値の情報になるのは、おいしさだけではない。
健康は人間がお金を払いやすい情報のため、たとえば「化学調味料無添加」や「無農薬野菜でつくられた」などの情報も、価値の情報となる。
また、単に「オムライス」と書いているよりも、「ふわとろ卵のオムライス」や「新鮮タマゴのオムライス」と書いている方が、人は選びやすくなる。
しかし、何でもかんでも情報を載せようとすれば、品のない安っぽい情報となる。
 
こういったことを、我々デザイナーたちは毎日行って、技術を高めながら仕事をしている。
 
しかし、コストパフォーマンスを気にして安い方にお金を出している内は、価値の情報が何なのか知らないままだ。
知らないままの人がクライアントになるから、日本のクリエイティブは低価格になり、そのような現場ではデザイナーやコピーライター含め、すべてのクリエイターが育たなくなる。
教えてもらうのはきっかけに過ぎない。
その後、内省をしなければ、価値の情報が何なのか、理解することは難しい。
 
たとえカラ元気でも笑っていると、本当に楽しい気分になるように、わからなくても高いお金を支払うことから学びはじめるといい。
同じ内容で安く学ぼうとする限り、本当の学びはできない。
 
もしも、学び続けてもわからないというのであれば、たったひとつの行動を変えるだけで、学びが身につくようになる。
それは、「値下げを期待しない」ことだ。
正月明けの日本では、様々なものがセール価格となっているが、そういった「値下げ」を期待せずに購入することで、「価値」がわかるようになる。
大量に製造される商品と、専門家によるサービスとでは、価格の付け方は異なるが、それでも提示された金額から値下げを期待しないことを学ぶことはできる。
 
そもそも、医者の診察を受けて、会計のときに値下げ交渉などしないだろう。
価値を提供する専門家というのは医者の仕事と同じであり、ビジネスの現場だからといって、値下げを期待するなどということが厚かましいのだ。
価値を提供してくれる人と出会いたいのなら、ちゃんとお金を支払うこと。
銀行や資本会社から借金ができないのは、経営者に信用がないからだ。
「この人はお金を返済できる」という信用があれば、お金を借り入れることが可能であり、そうすれば専門家にもお金を支払うことができる。
支払い能力がないから信用を失う。
信用を得るためには、ちゃんとお金を支払う。
ちゃんとお金を支払っていれば、物の価値が理解できるようになり、価値を提供できる専門家が集まるようになる。
値下げを期待してばかりいると、自分の価値を下げる。
だから、値下げなど期待せずに、ちゃんとお金を支払うといい。
ここからはじまる。

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