利他的のすゝめ。

2019.12.25ビジネスの健康, 日々のこと

「リモートワークをしたい」と言うときに、自分のQOLを高めることを理由に挙げる人がいるが、これは残念ながら間違っている。
その人の中では筋は通っているかもしれないが、仕事というのは「長けている人」と「足りていない人」がいて成り立つものだ。
そして、この両者には絶対に埋まることのない知識や技術の隔たりがあり、それ故に、「長けている人」には職業倫理が求められる。
 
有名なヒポクラテスの誓いで説明するなら、職業倫理とは「私は患者にとって不利益になることは絶対にせず、患者にとって利益になることしかしない」という仕事における倫理観だ。
患者というのは知識や技術が「足りていない人」であり、これは医療だけでなく、すべての仕事は「足りていない人」と「長けている人」によって成り立っている。
つまり、リモートワークをする理由は、「『足りていない人』にとって利益になるから」でなければいけない。
QOLが高まることで仕事のパフォーマンスが上がるが、リモートワークでQOLを高めて、仕事のパフォーマンスを高めるというロジックならば、それは間接的なパフォーマンスの高め方であり、リモートワーク云々の話ではなくなる。
すべてはパフォーマンスに直結しなければ意味がないのだ。
 
一方で、客先常駐を求めることも、間違っている。
世の中にこれほどの会社がある中で、常駐してもらわなければ会社のパフォーマンスが下がるのなら、その会社のコミュニケーション能力の低さを表しているに過ぎない。
つまり、その会社に必要なのは、新しい人に常駐して働いてもらうことではなく、既にいる人達のコミュニケーション能力を高めることだ。
ぼく自身、すべてのクライアントに常駐せず、メール、電話、ビデオチャット、そして会いに行くことを、TPOに合わせて使い分けることで、有意義なやりとりになるように努めている。
これには高度なコミュニケーション能力が必要なのかもしれないが、製品やサービスを提供する側のコミュニケーション能力が低ければ、その製品やサービスの魅力など伝わるはずもなく、ユーザーの購買につながるはずもないのだ。
また、いま世の中で頻繁に求められているUX(顧客体験)とは、社外にいるユーザーの視点に立たなければならないのだから、社内にいながらその視点に立つなど、自分で自分の背中を見るぐらい不可能な話なのだ。
これを裏づけるかのように、客先常駐させている企業やデザイン事務所で、素晴らしい業績を上げているところを見たことがない。
 
いまの世の中、フリーランスもクライアントも、自分のことしか考えない勝手な人たちが多いのが、日本の病でもあるのだろう。
利他的である人が、最終的には得をする社会でなければ、この病は進行してしまうんだ。
それほどまでに、人間というのは弱い生き物なんだ。

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