合理主義と個人の自由を支えるもの。

2019.11.12おすすめ, ビジネスの健康, 日々のこと

最初はとまどいを感じたドイツの超合理的な街中と人々。
これを支えているのは、個人主義と最悪禁固刑になる雇用主への規制。
 
「お金以外の価値」を日本人は称賛するが、これを実現している国のひとつが、ドイツとも言えそうだ。
帰国後、『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』という本を読んでいる。
サービスもよくて、低所得でも不自由なく生活できて、残業もなく、税金が安く、集団行動の輪を乱さない、という日本人が抱いている幻想は、幻想でしかないということがよく分かる本。
 
サービスが向上すれば自ずと価格は上がる。
安いサービスなら、期待値を下げる必要がある。
嫌なら買うな、嫌なら買わない、これだけ。
低所得でも不自由なく生活させるためには、税金は高くなる。
残業なく、自分の時間を確保させるためには、雇用主側を規制せねばならず、同時に気兼ねなく休みを取れる個人主義を徹底しなければならない。
生産性の低い者は、自ずとクビになる。
離職者でも再就職の努力をしていれば、生活できるように政府が補助してくれる。
企業には規制、個人には努力。
 
ベルリンの街を歩いていて、常に感じていた「考えている奴の雰囲気」。
けれど、街行く人々を見ても、まったく「おしゃれ」だと思わなかったように、見てくれはいたって普通。
レストランにいても、役割分担がはっきりしていて、注文を受ける人がどれだけ忙しく回転していても、その人からしか注文させない。
帰国後、本を読んでわかったが、それでも従業員の働き方の満足度は高いようだ。
 
ドイツの成長率を見れば、日本のように人口減少が避けられず、労働生産性を高めなきゃいけない国が取るべき方法のひとつでもあるだろう。
規制と個人主義。
従業員に残業させたら、経営者や上司は最悪禁固刑とな。
そりゃあ、何がなんでも定時で帰すし、休暇も取らせる。
みんな、何がなんでも定時で帰らされたり、休暇をふんだんに取らせるんだから、サービスが悪くても当たり前だし、なんの気兼ねもなくなる。
すると個人のやりたいことに充てる時間が長くなるから、個人主義でも問題なくなる。
それでいて、成長率が日本より高く、環境への意識と取り組みも水準が高いって、「そういうところもあるよね」では、終わらせない方がいいだろう。
質素に、自由に暮らすために必要なものが見えたか。
卵が先か鶏が先かではなく、「規制が先」と言える結果だ。
 
ふと気がついたことがある。
日本で「お金以外の価値」とか「効率を重視しない生き方」を声高に言っているのって、経営者層ではないだろうか。
少なくとも、ぼくが会った中で言うと、全員役員レベル以上だ。
もしも、従業員とギャップがあるのなら、ドイツで言うところの罰金や禁固刑になるのかな。

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