これもタイミング。

2019.10.9日々のこと

映画『JORKER』を観てからの感想は、一日経っても変わらなかった。
ぼくが自分の仕事について話をするとき、「自分の得意な仕事が犯罪じゃなかっただけ」と度々言うが、まさにそういう映画だった。
主人公が選べたのが、犯罪だっただけなのだ。
世の中は主観でできているし、主観の中で似たようなものが多くなれば、それが世間の常識をつくっている。
法律の元になっているのも、多くの人が困らないようにするためのものなのだから、これも同じことだ。
 
この手の話をするときに、デザインの歴史をよく話す。
大昔、手仕事というのは賎しい仕事だった。
詩や音楽など、手を使わないで生み出せるものが崇高な芸術として認められ、絵画や彫刻などの手仕事は、賎しい仕事として思われていた。
この意識を変えたのが、ルネサンスであり、絵画や彫刻が崇高な仕事として認められるようになった。
 
しかし、デザインはまだ、賎しい仕事だった。
これを変えたのが、ウィリアム・モリス氏たちのアーツアンドクラフツ運動だった。
日本では遅れること、亀倉雄策氏たちがグラフィックデザイナーという言葉を流行らせ、それまでの商業美術とは違って、ひとつの確立されたジャンルとして日本に定着させた。
 
粗悪なデザインが街中に溢れていることは置いといて、現代において、デザインが賎しい仕事と思っている人は、少ないのではないだろうか。
けれど、そう思われていた時代はあったのだ。
 
結局、生まれた時代や環境が違うだけで、多くが変わる。
これも、昨日書いた、「タイミング」ということなのだろう。

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