潜在的な課題原因を聞き出す。

2019.8.17ビジネスの健康, 日々のこと

専門家との関わり方がわからない場合、医者と患者の関係だと思えばいい。
治療でも予防診療でも、医師の診察に対して「あーだこーだ」言えば、医師から「他所に行って」と言われるのがオチだ。
診察代を払ってから、他所に行くだけだ。
治療を受けなくても、診察を受けたら診察のための料金を支払い、他所に行くだけだ(わざわざ書いているのは、医師と患者の関係に喩えているため)。
 
職業倫理というのは、ヒポクラテスの誓いがはじまりとも言われ、専門家と依頼人には知見に大きな隔たりがあることが、職業倫理を働かせる理由となる。
だから、専門家は依頼人にとって不利益になることはしないし、依頼人にとって利益になることしかしないという職業倫理を働かせている。
そのため、患者が文句を言う前に、医師の診察は患者の利益になるものだけだ。
それにも関わらず文句を言えば、「他所に行って」と医師から言われても仕方がないことだろう。

これは医師だけでなく、デザインでも同じだ。
依頼人が「あーだこーだ」言えば、クオリティは下がるものであり、あまりに酷ければ「他所に行って」となる。
これはデザインだけでなく、なんでもそうだ。
飲食店でも、建築事務所でも、クリーニング屋でもなんでも同じだろう。
 
依頼人の欲望を叶えることが仕事なのではなく、依頼人の課題を治療し、予防診療をし、より良い将来をつくることが我々の仕事なのだ。
これを「依頼人の欲望を叶えること」だと勘違いしている人が多い。
お客様は神様ではなく、課題を抱えた患者だ。
 
これを間違えて事業を行うと、価格競争の戦略をとりやすい。
価格競争を「戦略」なんて言っていいのかは疑問だが、本を読んでいて価格競争によって利益を得ることを、「Last man Standing利益」と呼ばれるのを知った。
なるほど、上手い言い方だ。
こういう競争はジリ貧の争いになり、勝者になっても、安い価格に慣れてしまったユーザーを相手にしている以上、値上げができなくなる。
残った勝者が値上げをすれば、それより安い挑戦者が登場する。
そして、勝者は他の戦略をする体力もなければ、クリエイティビティもない。
つまり、勝者になっても、いつかは負けるのだ。
これが現状の日本および、日本企業の姿だ。
 
依頼人が抱えている課題に対して治療をしたり、同じような課題が起きないように予防診療を提案するのは、専門家だからできること。
依頼人と議論をしても無駄なのは、依頼人と専門家の間の能力差に、大きな隔たりがあるからだ。
そのため大事なのは議論ではなく、聞き出すこと。
潜在的な課題原因を聞き出すための話し合いが、依頼人と専門家の間に必要なことだ。

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