褒められてこなかった人の方が、アイデアがある。

2019.7.20ビジネスの健康, 日々のこと

展示会に来るといつも思うことがある。
いまだに日本企業は、「形や絵柄を変えること」と「製品の品質を高めること」で勝負をしていて、「アイデア」で勝負していない。
アイデアというのは「1+1=3以上」というものだ。
 
日本の技術力は既に高いことは世界が知っているし、ひとつの技術を高めたマスターピースはすでに巨匠が作ってくれている(たとえば椅子を作る場合、誰が正攻法のデザインで、フィリップ・スタルクやジャスパー・モリソンたちと競おうというのだろうか)。
それに、ネンドの佐藤オオキさんも著書で書いているが、白いものをさらに白くするのは困難だが、白いものを白く見せるのは簡単だ。
黒い壁の部屋に白いものを置けばいい。
これがアイデア。
 
そして、これを思いつけないのなら、デザインという仕事は止めた方がいい。
こういうアイデアは、学生時代では教師から褒められることはないが、怒られても、こういう悪知恵とも言えるアイデアを続けてきた奴が就く仕事がデザインだ。
だが、展示会でムカつくのは、アイデアで勝負していない企業のデザインが、プロがやっている仕事ということ。
つまり、デザイナーが関わっているのに、アイデアで勝負しない前途多難な道を、クライアントに提案しているということだ。
 
しかし、どうしてこんな戦略しか出来ないのだろうかと考えてみると、ひとつの思想に行き着く。
「いいものは売れる思想」だ。
日本人はこの思想に取り憑かれていると言えるし、地方の工場などに行くとこの思想は特に強い。
けれど、いいものも売れないのだ。
価格が邪魔をしていたり、販路が邪魔していたり、認知されていなかったり、そもそも生活者が必要としなかったり、他の製品で十分だったりする。
商品の良し悪しに関係なく、売れない要素の方が多いのが現実だ。
だから、品質のいいものもを作るだけでは売れない。
品質が悪いのは論外だが、品質が良くても売れないことを認めない限りは、「いいものは売れる思想」からの脱却はできない。
価格が邪魔をしてるなら、価格を下げられるのか、その価格で欲しいと思わせるのか。
認知されていないのが邪魔なら、どこにどうやって認知させるのか。
これだけでも、商品にかける戦略は変わってくる。
 
料理がこぼれない器なら、「どんなときにこぼれて欲しくないか」を生活者にイメージさせなきゃいけない。
イメージしやすいメディアは何なのか、決めなきゃいけない。
面白さは必要なのか、ストーリーの方がいいのか。
シリーズで作れる商品なのか、単発の商品なのか。
伝え方、伝える内容、変更しなきゃいけないことはたくさんある。
 
悪ガキだった人、大人から褒められてこなかった人が、この仕事には必要だ。

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