親父の酒。

2014.11.15日々のこと

ふと、親父のことを思い出した。僕には1つ、確実に親不孝をしたという思いがある。それは、親父と酒を呑んでいないということだ。僕には姉と兄がいるが、三姉兄の中でも親父と酒が呑めるタイプの人間は、僕しかいない。
 
団塊世代の親父は、根っからの仕事人間で、朝早くに家を出て職場に行き、仕事が終れば、何か特別な飲み会がない限りは家に帰ってきて、晩酌をしながらテレビを見ている人間だった。
 
親父が言ったことは絶対だったし、大柄な体格と仕事熱心さも合わさって、早くから校長に上り詰めた。学校という職場だが、僕らへの教育が熱心だったかというとそうではなく、自分がやりたいことを熱心にやっているタイプの人間だった。
 
そんな親父が晩酌で呑んでいたのが、キリンラガーの大瓶だ。
 
僕もビールは好きだったが、ロックンロールへの偏愛もあって、ハイネケンばかりを呑んでいた。しかし、親父が肝硬変になり、一滴も酒が呑めなくなったことを知ってから、何故か選ぶのは、キリンラガーになった。
 
意図して選んでいるわけではないが、親父が病気になったとき、唯一の愉しみのように見えた酒が今後一切呑めないと知ったとき、僕には大きな申し訳ない気持ちが芽生えたのだ。後悔とも言い難い、悲しさとも言い難い、何とも難しい気持ちだ。
 
その気持ちが芽生えてから、僕は、キリンラガーを選ぶようになっている。
 
今では、親父はノンアルコール飲料を呑んでいる。

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