なりたいものの前に、やりたいこと。
2020.1.10ビジネスの健康「〇〇になりたいんですが、どうしたらいいですか?」と質問されるときがある。
正直に答えるなら、なるだけなら今この場でなれる。
だが、この質問をしている人が抱いている欲望は、「〇〇になって、充実した仕事をして、不自由のない暮らしをしたい」だろう。
けれども、仕事をすればわかるが、本当にたった一つの技能だけでうまくいく職業などないのだ。
例えば、ぼくで言えば「クリエイティブディレクター」「アートディレクター」「写真家」を公式プロフィールとして記載しているが、別に「グラフィックデザイナー」でも「UI/UXデザイナー」でも構わない。
詳細に語れば語るほど、その人の強みというのが伝わりやすくなるのかもしれないが、グラフィックデザイナーがコピーライティングをしたっていいし、コピーライターの描いた絵がそのまま採用されることだってある。
ある一つの技能を高めれば高めるほど、横展開がしやすくなり、経験を重ねるほど、他のこともできるようになっていく。
むしろ、年齢を重ねても、ひとつのことしかできない人というのは、今の世の中で仕事をしていくことは難しいのではないだろうか。
これは何も、「ゼネラリストになれ」と言っているのではない。
世の中は中途半端なゼネラリストもどきが多いのも事実であり、ホワイトカラーの仕事しかしたことがない人がそうなりやすいようだ。
まずは、たった一つでいいから何かしらのスペシャリストになれば、大抵は他の職業に必要な技能も経験している。
むしろ、人類史がはじまってから発明された職業で、応用が効かない方が難しいものだ。
これはぼく自身、浪人時代に築いた国語の能力に、大学時代の心理学を組み合わせながら写真家となったことでも言える。
そこにグラフィックデザイン、Webデザイン、プロダクトデザインを組み合わせていった結果、事業で抱える問題点というのが視えるようになったわけだ。
それが、世の中ではブランディングと言われるだけであり、クリエイティブディレクターやアートディレクターと言われるだけなのだ。
ここでの順序としても、国語の問題を解くのが好きだったし、心理学を勉強するのも楽しかった。
写真を撮って、現像することも楽しかった。
デザインを作ることも楽しかった。
好きなことに対して、自分の手足を動かすことで経験値を重ねていき、その結果、色んなアイデアが結びつくようになった。
初めから考えることが得意だったわけじゃない。
経験していないことは、誰だってわからないものだ。
つまり、最初から、ぼくがクリエイティブディレクターを名乗っていたら、誰の役にも立たない、かなり無能なクリエイティブディレクターだっただろう。
だから、最初の質問として、出発点が職業名というのは本末転倒のことであり、「何になりたいか」ではなく、「どうありたいか」「何をやりたいか」が重要なのだ。
ぼくが若手を育てるとき、必ずこういったことを質問するようにしている。
そうすれば、その都度、人生の軌道修正ができるからだ。
この癖をつけておくと、自分で自分のやりたいことを見つけることができるようになる。
職業名はあくまでもおまけだ。
まずは自分のやりたいことを見つけて、ひたすらそれをやってみるといい。
飽きた時には、別の何かが見つかっているはずだ。
そうしたら、軌道修正してまたひたすらやってみたらいい。
そうして重ねた経験が、あなたの価値となる。