『ゴードン・マッタ=クラーク展』の感想。

2018.8.22おすすめ, 日々のこと

東京国立近代美術館で開催中の『ゴードン・マッタ=クラーク展』に行ってきました。
展示作品の中でも、「地下トンネル建設現場の話」はとてもよかったです。
映像自体は大したことはないけれど、作業員の話が印象深かいのです。
 
「トンネル掘りは真の知識人でなければならない」
「トンネルの壁の美しさに魅入られた作業員がダリを連れてきて、同じく魅了されたダリが壁画を描き、その後、普通のトンネルと同じように粉々にされた話」
「安い金額で入札に勝った業者は二度と入札に参加しなくなるのは、トンネルづくりという挑戦とはチューニングが合わないからという話」
 
ダリの話は、作業員がいいですよね。
これが宮廷の貴族だったりしたら、話はとてもありふれたものになるでしょう。
ダリがトンネルの壁に本当に魅了されたかはわからないけれど、地下の工事現場で絵を描くダリ。
完成された絵は高尚な美術館に寄贈されるのではなく、普通のトンネルと同じように粉々になる。
 
このギャップが面白さを出すし、その後の入札の話で、作業員の崇高さが確かなものになります。
モチベーションの話を、「チューニングが合わない」と言ったり。
トンネル工事がどれだけ大変で、モチベーションも資金も必要で、「美しさ」を心得ているか。
 
上流と下流で言えば、下流の仕事として見られがちだけれども、果たして上流にこれだけのモチベーションも教養もあるでしょうか。
コンサルよりも現場の声。
今度どこかで「チューニングが合っていない」と言いたい。
そういえば、昨日の話に関連づけて言うと、「賃金の安さを価値にするゲーム」からもぼくは降りてますね。
 

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