ごぼうのたのしみ

2009.2.10日々のこと

ある一枚にかなり時間がかかる。途中で黒澤明監督「姿三四郎」を見ていたからかもしれないが、それにしてもかなりかかった。今、BSにて黒澤明特集をしていて、黒澤監督作品がかなり放送されている。

それらを横目に、きんぴらごぼうを作ってもいた。牛蒡(ごぼう)も好きだ。ささがきをし、水に浸して作るが、どうやらそれほどの灰汁はなく灰汁抜きにはならない。ただ、ひたすらささがきをした後の指はどれほど洗っても牛蒡臭く、その臭いを嗅ぐと、自分のしでかしたことを思い出させる。それは、自分の歩んできた過去が着実にあったという痕跡でもあるようで、少し懐かしい気持ちになる。感覚が、地に足着いた現実感を生み出すことの、良い例なのかもしれない。

そういえば、きんぴらごぼうという料理は、いくつかの香りが上手い具合に合わさって作られている。鷹の爪の、少々刺激的な香りがまず感覚に届き、その後、ごま油とすりごまの香ばしく甘みを含む香りがにんじんの甘みと合わさり、最後にメイン食材のごぼうが立ち上ってくる。それは、ごぼうの食感を楽しめば楽しむほど、香りの変化も楽しめるような料理でもある。

今述べたように、ごぼうの良さは、香りだけでなく食感にもあり、むしろこちらの方がごぼうの印象として強いのかもしれない。ごぼうの食感の方を楽しむのであれば、漬け物、たたきごぼう、ごぼうサラダ、揚げ物などが挙げられるだろう。実はこれらの食感は微妙に異なってきて、出汁で煮たごぼうを揚げるのは普段と異なる食感で頂ける。このときはごま油を使わずに普通のサラダ油の方が、邪魔にならない。これをアテにして焼酎を呑みたいが、それほどのものを作ると、食事を作ってしまい、なかなか粋とはいえない。

いつの日か、粋な人になりたいものだ。

コメントを書く