文化の醸成が品質になる。
2017.12.23おすすめ, ビジネスの健康, 日々のこと生活者とのコミュニケーションによる文化の醸成を、どれだけの企業が果たしているだろうか。私はどれだけそのような企業を手助けしてきただろうか。多くの企業が自社の有用性を宣伝し、優位性を持ち続けようとしている。「ストーリーを伝える」「価値を知ってもらう」と言いながら、生活者とのコミュニケーションに介在する「人生の品格」という教養を無視している。公共の場に溢れるマナー広告や場内アナウンスは、私たちが教養と品格が備わっていない国民であることを暗に示唆してしまっている。
商品やサービス、目に入る広告物との接点は一時的なコミュニケーションだが、その一時的な交流のなかで生活者の人生の品格を高める文化の醸成は、彼らと関わる他の生活者、次の世代の若者たちにも引き継がれていく。それが商品やサービスを支える品質だった。国をつくる文化となった。国民性のなかに宿る教養となった。
企業を構成する人々も、国を構成している人々も、教養と品格こそが生活者と約束できる信頼となることを忘れてしまっている。
そんなことを思っていた矢先に、「iichiko」の雑誌を見つけた。
度肝を抜かれた。闇市で売られる酒としての焼酎のイメージを変えたiichiko。ブランディングの先駆者としてのイメージが強いが、31年前から季刊誌を発行していたとは。しかも、リデザインもほとんどされておらず、文化、生活者を硬派に伝え続けている。バブル崩壊、雑誌の売れない時代などいつでも辞めることができるなか、酒類メーカーが季刊誌を出す理由が貫徹されている。生活者の目につく部分だけに手をかけるのではなく、社内文化の醸成とともに歩んできたブランディングだ。表層のテクニックで差別化のためのブランディングを謳っている会社が多い中、あぁ、すげぇもんを年末に見た。