ブランディングの成否を分ける「目的」。

2016.12.22ビジネスの健康, 日々のこと

2016年も終わりを迎えようとし、年末商戦や年始のスタートダッシュを図ろうとしている事業者やビジネスマンも多いだろう。日本では年の初めにその年の目標を立てることが一般的だが、事業の目的を振り返ることも忘れてはならない。そして、ブランディングをする上で「事業や企画の目的を明確にする」のは極めて重要だ。
 
私が東京・神奈川から離れて暖かい地域へ住みたいと思っているのも手伝って、今年は地域で活躍している方々と会うことが多かった。地域おこし協力隊やふるさと納税、移住への興味促進の効果もあり、どの地域も力を入れて商品開発をしたり、イベントを開催している。
 
地域のPRやイベントの盛り上がりも大事だが、忘れてはならないのが、当初の目的だ。物産展などで販売している商品を拝見させてもらうとき、「いいものを作っている」という説明を受けたり、物産展でどれだけ売れたかをアピールされる。もちろん、そういった自負は作り手には必要であり、各商品のパッケージやイベントのロゴマーク、宣伝ツールなどもお金や時間、手間暇をかけて作っているのがわかる。
 

まとまりに欠けるデザインがもたらすもの。

 
しかし、すべてに力が入り過ぎてしまい、まとまりを欠いている状態と出会うことが多いのが現状だ。同じ地域、同じプロジェクトのものを見ているはずなのに、違う地域・違う店舗・違うプロジェクトとして提供されても気づかない商品群やイベントツールとなっていて、種類の豊富さではなく、煩雑さが目立ってしまう。
 
こうなってしまうのも、事業や企画が進むうちに視野が狭くなり、当初の目的とずれてしまっているためだ。その商品を開発した目的は「地元の農作物を使っていいものを作りたい」というものだったのか、それとも、「都心での物産展で売ること」が目的で商品を開発したのかーーたったこれだけでも商品パッケージのサイズやデザインは異なる(商品価格によってもデザインは変わる)。
 

あなたはユーザーのベネフィットを言えるか?

 
さらに付け加えるのなら、「いいもの」という言葉はとても曖昧で、その言葉に含まれる意味は多岐にわたる。無肥料・無農薬・無添加というような素材に焦点を当てたり、栄養価が高いものだったり、美味しさだったり、地域の仕事づくりだったりと内容は様々だ。これらの目的は、それぞれが異なるベネフィット(利益)をユーザーにもたらす。
 
素材を優先するユーザーであれば、素材が良ければ価格は競合より高くても購入するが、地域への無償の応援は少なくなる。つまり、無肥料・無農薬・無添加で提供している地域は応援したくなるという順序だ。一方で、地域性を求めるユーザーであれば、地域の特産物や有名店である方が購買意欲が湧く。これは物産展でも同じであり、物産展で購入するのはイベントであること、地域らしさ、接客、味、というように優先すべきは地域性だ。「〇〇産」や「産地直送」といった謳い文句で購買意欲を煽るやり方が含まれる。
 
しかし、地域性を優先させた場合、その地域に縁もゆかりもないユーザーであれば、その地域から離れたり、物産展に訪れなければ購入しようとは思わないだろう(京都土産の八つ橋を日頃のおやつとして食べなかったり、宮崎の地鶏の炭火焼や冷汁を毎週食べないように)。つまり、リピーターになりにくいのだ。そこで今回の話の振り出しに戻るが、「その商品を開発した(イベントを開催した)目的は何だったのか?」という問いを思い出して欲しい。
 

当初の目的とユーザーベネフィットを結びつける。

 
物産展のブースを確保し続けることも大切だが、「いいものを作っている」という自負を持つのなら、地域性を担保しながら売ることができるデザインや売り方ができるはずだ。そして、ユーザーへのベネフィットを考えるようになるので、イベントではなく、常時販売できるテナントや小売店に卸すことだって可能になる。そして、逆も考えられるようになる。イベントを主催したり、店舗を経営したりする場合、来客しているユーザー層・来客して欲しいユーザー層・来客して欲しくないユーザー層を考えることで、その層に適したデザインや売り方を提供することができる。
 
それを可能にするのも、イベントや店舗に来客するユーザーや商品を購入するユーザーに、当初の目的を結びつけることから始まる。試しに自分たちが制作した商品やPRツールを並べてみるといい。どの商品、どのPRツールにも共通する性質をもたせているだろうか? 彩り豊かに種類を豊富に見せることと、統一感なく煩雑に見えることは違う。並べたものに共通する性質がなく、違う地域・違う店舗・違うプロジェクトの商品やPRツールが乱立しているように見えるのなら、巨視的(マクロ)な視点と微視的(ミクロ)な視点を使い分けることができていない証拠だ。そうならないためにも、今年を振り返るときや来年の目標を立てるときに、事業の目的を今一度振り返ってみてはいかがだろうか?
 
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