『「いき」の構造』における手腕

2012.1.13日々のこと

 年末から九鬼周造さんの『「いき」の構造』を読んでいた。多くの方々が薦めている本でもあり、僕が既に読んでいるとも思われているぐらい、有名な本でもある。
 
 読んでみての感想は、「文章の作り方が上手いな」という作者の手腕に感心していた。言葉というのは生き物であり、同じ単語でも昔と今では使われ方が異なるものも多数あり、その性質はどんな言葉にも当てはまる。そんな言葉を題材にしてしまったがために、事例をとりあげて、そこから抽象的意味合いに進めていけば、その時代にのみ通用する結論になってしまっていただろう。しかし、この本は違った。「序説」で「いき」という題材の展開の仕方を注意深く述べ、言葉における意味と環境との関係性を提示しながら、「いき」にまつわる意味を明らかにしてから、より外側へ向かっていく。
 
 今の時代にも通用する方面から語り、読者と共通理解の幅を持たせてから、より具体的な事例を挙げていき、最終的にはまた戻っていく。つまり、輪廻のように話を進めていき、終らせていくのだ。その進め方は、最後に登場する注釈で「生」、「息」、「行」、「意気」の関係性について述べている箇所においても同様であり、「生」が「息」へ、「息」が「行」へ、「息」と「行」が「意気」へ、そして「意気」が「生」に帰ると言い、文章が結ばれる。
 
 年末から新年早々、良い文章を読んだ。

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